「当日、もし暇を持て余すようなら、これやってみて? 一面でも色が揃ったらご褒美あげるから」
「え! ホント?」
「うん。あたしに出来る事だったら何でも聞いてあげる。だから学校祭の準備、サボらずにちゃんとやるんだよ?」
「……分かった」
檜は嬉しそうにニマニマと笑い、何をお願いしようかなぁ、と独りごちていた。
そんな彼が可愛くてあたしはフッと口元を緩め、えくぼを浮かべた。
西陵高校、“煌祭”初日。
生徒会による開会セレモニーで幕を開け、今はちょうどお昼過ぎだ。
あたしはそれぞれのクラスの出し物を見て回っていた。
中庭に出店した一組の焼きそば屋台へ向かう。丁度この時間が檜の当番だと聞いていたので、ルービックキューブがどうなったのか見に行くつもりだった。
食事をとる時間のせいか、通りは沢山の人で賑わっていた。
人の間を縫い、屋台へ近付いた。
そして、それに気が付いた。
親しみを込めて、会計係の檜と話す、ストレートヘアの彼女。
あの時書店で会った上河さんが、友達を連れて檜に絡んでいた。
あたしは眉間を歪め、下ろした拳をギュッと握りしめた。
自然とこめかみに力が入る。



