ボーダーライン。Ｎｅｏ【中】

「優羽ちゃん、今年もよろしくね？」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。あの。Hinokiさんも……」

　そう言って彼女は、どこか躊躇いがちに僕を見上げた。

　何だろう、と不思議に思いつつも口元を緩め、「よろしくお願いします」と会釈を返した。

「時に優羽ちゃんは何の収録だったの？　バラエティー？」

「あ、はい。芸人さんの冠番組で、そのゲストとして」

　親しみを込めて話す透さんは、ミュージシャンで有りながらも、普段から彼女と共演する事が多く、昨今では、もっぱら俳優業に移行しつつある。

　僕は会話を弾ませる彼を見つめ、その処世術に感服していた。

「Hinokiさんもバラエティーに出てたんですね？」

　急に笹峰さんから話を振られ、幾らか慌てる。

「あ、はい。今日が初めてなんですけど」

「優羽ちゃん、良かったらオンエア観てよ？　檜、素で焦ってたから」

「それは透さんが変なフリするから」

「アハハっ。はい、録画して是非観ますね？」

　笹峰さんは愛嬌たっぷりに首を傾げ、アーモンド型の瞳を細めた。

　そして何か言いたそうな顔でもじもじするが、やがては綺麗なお辞儀をし、それじゃあ、と手を挙げ去って行く。

　彼女のその後ろ姿を見つめ、透さんが何の気なしに言った。