「いやあーまさかね、まさかあの主任がね。いやほんと、もうビックリですよ。あーあー」

「……おい叶井、三永ちゃんのあれは何だ。酔ってるのか?」

「たぶん、ただ荒れてるだけだと思う」


他にお客さんのいない貸し切り状態の大路くんの店で、カウンターを挟んで困惑顔の大路くんと、並んで座る私と三永ちゃんが向かい合う。

こうして三永ちゃんと二人で大路くんの店を訪れたのは、いつか三永ちゃんと一緒に来たいと思っていたというのもあるけれど、一番の理由は、大路くんにすぐにでも伝えたい重大ニュースがあったからだ。
そしてその重大ニュースこそが、こうして三永ちゃんが荒れている原因でもある。


「それにしても、あの主任が遂に結婚とはな……。しかも相手が部長だろ?一体いつからできてたんだろうな」

「さあね……。色んな噂が聞こえてくるけど、どれがほんとなのかはさっぱり」


そう返して梅酒を一口飲んだところで、隣からぐびぐびと勢いよく喉の鳴る音が聞こえた。

顔に似合わずジョッキのビールを勢いよく飲み干した三永ちゃんは、ダンっとやや乱暴にジョッキをテーブルに置くと、ずいっと身を乗り出すようにして会話に加わる。


「わたしが一番信ぴょう性が高いと睨んでいるのはですね、主任が入社して間もなくの頃から付き合っていた説です!」

「……私は、それが一番信ぴょう性が低いと思ってたんだけど」

「……俺も、聞いた中じゃそれが一番ないと思ってた」