でもやっぱりお悔やみは、いやせめて謝罪は、と口を開いたら


「叶井さん、これはこの後どうすればいいんですか?」


遮るように、男が言った。おかげで、タイミングを見失う。


「ああ、えっと、あとは火が通るまでそのままにしておいて。私は隣のコンロできんぴら作るから」

「じゃあ僕、横で見ていてもいいですか?」

「……嫌だって言ってもいい?見られてるとやりづらい」

「任せてください!気配を消します」

「居るってわかってたら気配消したところで気になるから!」


ご両親の死を、悲壮感を微塵も漂わせずに語れるのは、ひょっとして作り話だからだろうかと一瞬思ったが、この男はそれほど嘘が上手いタイプとは思えない。

小さい嘘ならまだしも、両親が亡くなっているだなんて、そんな大掛かりな嘘を平然とつけるタイプには見えない。
何だかそう考えれば、私がずっと胡散臭いと感じていた笑顔も、案外見たまんま、人好きがする笑顔なのかもしれないと思えてくる。

それとも大路くんの言う通り、私の警戒心の薄さが、そう思わせているだけなのだろうか
……。