「ちなみにですけど、祖父は外国の生まれですが祖母はこの国の生まれで、魔法使いでもなく至って普通の人でもあります。そんな二人から生まれた母は、魔法使いですけどね」

「へー、じゃあお父さんは?」

「普通の人です。学校の先生か何か、そんな感じの職に就いていた人だったような気がします。確か眼鏡をかけていたような……」

「……何でそんなにおぼろげなの」

「父も母も、僕が小さい時に事故で亡くなりましたから。覚えていることが少ないんですよね」

「…………」


思わず、手が止まった。

これは、軽い気持ちで訊いてしまったことを謝るべきか、それともまずはお悔やみを言うべきか、咄嗟のことに判断がつかず迷っているうちに、男は続ける。


「でも僕、そんな感じで魔法使いの血はかなり薄いのに、力の感じが生粋の魔法使いである祖父によく似ているって言われるんです。勉学を怠らなければ、将来祖父のような偉大な魔法使いになれるだろうって。これって、凄いことなんですよ?魔法使いの力って、血の濃さで決まるようなところがありますから」


得意げにそう言って、男は最後のつみれを鍋に落とす。
空元気にも見えないので、既に吹っ切れているのだろうか。ご両親が亡くなったのは小さい時のことだと言っていたし。