彼らは従兄弟同士で、学校でもよく一緒にいるのを見かける。そういえば、登下校も一緒だった気がする。
二人して他人行儀の笑みを浮かべ、素知らぬ顔をしている。
隣りで美波が、本当にイケメンだね~、と浮ついた声を上げるが、右から左だ。
「秋月くん、何でここに」
カイくんの方はそれほど面識が無いせいか、あたしは無意識に檜の方を見て言った。
え、と美波とマスターの声が同時に重なった。
「檜、カイ。お前ら知り合いか?」
マスターに問われ、秋月くんの目が泳ぐ。
「マスター、この子達はうちの生徒ですよ?」
担任として仕方なく、本当の事を言うべきだと思った。状況から察するに、彼らは年齢を偽り、夏休みからバイトを始めたのだろう。
「え??」
マスターが目を丸くして、あたしを見た。
「お姉さん、どこかの先生だとは思ってたけど。桃林の先生でしたか、いやいや、お若いのに素晴らしいですね!」
「はい?」
そもそも、この二人は高校生なんですよ、と。まずはそこから説明しなきゃいけなかった。
軽い徒労感に見舞われていると、急に右手をグイと引かれた。無理やりスツールから降ろされる。