◇ 日記 3

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 どうして、と思わざるを得ない。

 どうして、あたしの行きつけのショットバーに、バーテンの格好をした秋月くんがいるのだろう。

 チラリと彼を見やり、呆れて肩をすくめた。

 白シャツに黒のV襟ベスト、黒のロングエプロンを身につけ、ごく自然にシェーカーを振る姿は、本当に格好よく、サマになっている。大人っぽい服装に合わせて髪型も整えているので、とても高校生には見えない。

 グラスの中の氷をカラカラと揺らしながら、いつものように美波との会話を楽しむはずが、彼が気になって仕方がない。あたしはチラチラと秋月くんを見ていた。

 お酒を専門としたバーの空間に、高校生男子がバーテンとして立っているというのは、何とも似つかわしくなく、勿論、校則にも法律的なものにも違反している。

 教師でありながら、この状況を黙認する事になったのには、理由がある。

 つい三日前の事だ。

 今日飲みに行かない? と美波から急な誘いがあった。

 その日、特別用事も無かったあたしは二つ返事で了承したのだが、何か飲みたくなる理由、例えば、仕事での失敗や愚痴など、そういうのがあるのかなと思い、美波に訊ねた。

「いやぁ~。理由って言うかさ。ETOILE(エトワール)にイケメンのバーテンが二人入ったって聞いたから、見に行きたくて」

 そんな理由? と一瞬呟きかけたが、あたしも見るだけのイケメンなら、と興味を引かれた。