ーーRRRRR.

 ビクッと手が震え、思わず回線を繋いでしまう。

『あ。うそ、繋がっちゃった』

 恐る恐る受話口を耳に当てると、誰か知らない女の声がした。

 顔をしかめ、息を殺す。

『え、マジ?』

『もしもし~? Hinokiだよね~??』

 電話で喋る女とは別に、背後で男の声もする。

 途端に気味が悪くなり、携帯を耳から離した。

 ディスプレイに一瞬だけ浮かんだのは知らない番号だった。

 迷わず画面をタップし、着信を切った。

 ベッドに座ったまま肩を落とし、盛大なため息がもれる。やっぱり解約しておくべきだった、と眉間にシワが寄る。

 ーーとりあえず明日竹ちゃんに頼んで持ってって貰お。

 電源を切ろうとサイドボタンに指が触れた時。再び着メロが鳴った。

 え、と顔を歪め、画面に目を走らせるが。

 ディスプレイに浮かぶその名を見て、息を飲んだ。

 躊躇いは一瞬だった。今度は自分の意思で回線を繋ぐ。

「はい」

 電話の相手も驚いているらしい。その空気がこちらにまで伝わった。

『も、もしもし? 檜か? 俺、内田勇介。分かる?』

 その声を聞いてホッと安堵した。

「ああ、分かる。久しぶり……?」

 壁の時計に目をやると、時刻は深夜二時を過ぎた所だった。


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