「俺ら五月に式挙げるんだ」

 内田くんは幸せそうに目を細めた。

 水城さんも最初はジューンブライドにしようと言ったそうだが、比較的天気の良い五月でも良いんじゃないか、と親に言われたそうだ。

 特別こだわりが無いのなら、梅雨時期にわざわざ挙式をする事もない。

 あたしもそれは自覚していた。

 水城さんのご両親とは逆だが、あたしの母親は是が非でも六月にするべきだ、と強く推したのだ。

「凄いね、二人共。まだ二十三歳でしょ?」

 言いながらお弁当の蓋を閉め、手を合わせた。

「うん! あ、でもデキちゃった、とかじゃ無いよ? 奈々はさぁ、まだでも良かったんだけど。

勇介がね、早く結婚しよ? って」

 言いながら彼女はにやにやした顔で内田くんを見た。

 彼は恥ずかしそうに頬を赤らめ、うるせ、と顔を背けている。

 ほのぼのした彼らの空気に、思わず和み、微笑んでしまう。

「内田くんは。昔から水城さんひとすじだったものね?」

 彼ら二人にそう語りかけると、水城さんはキョトンとし、目を瞬いた。

「さっちゃん先生にもそんな風に見えてたんだ?」

「え?」

「あ。勇介の友達にも散々そう言われたから」

 水城さんも食べ終えた箸を片付け、蓋を閉める。