両手で耳を押さえるあたしに構わず、美波はその手首を掴んだ。

「さぁ~分かんない? 圭介への当て付けかも?」

「当て付けって」

「いいじゃない? あたしだって同じ事するんだもん!」

「……その割にはヤってないじゃん」

「……うん。ヤってない、よね~?」

 美波は頬杖をつき、カウンターの奥をぼんやりと見つめた。

「男と女は根本的に違うんだよ。男はね、気持ちが無くても出来る生き物なの」

「あたし。そういう奴、だいっ嫌い!」

 言いながらグラスを見つめ眉間にシワを寄せる。

「まぁね、サチにとっちゃ鬼門だよね」

 あたしは真顔のまま目を伏せた。

 グラスの中に浮かぶ丸い大きな氷を、カラカラと指で回す。

「嘘。個人的に、喋りたかったの」

 美波が目を見張り、あたしを見た。ちらりと向けたこちらの視線とぶつかる。

「え、何が? その少年の話?」

 無言のままコクンと頷いた。

「だから部屋に入れたんだ?」

「だって」

 オレンジ色の光がユラユラと揺れる氷に反射している。

 目が眩むその様をジッと見つめ、あたしはポツリと呟いた。

「キラキラしてるんだもん。秋月くん」

「アキヅキって言うんだ? その少年」

「あ!」

 思わず口元に手をやり、しまったと顔に出てしまう。