ボーダーライン。Neo【上】

 昨夜の幸子を思うと、まだ彼女は僕との恋愛を引きずっていて、僕を愛しているはずなんだ。

 だからベッドの中であんなにも愛し合えた。

「帰る……」

 まだ僕たちは完全には終わっていない。

 僕は頑なにそう信じていた。

 不意に、動揺した自分に決まりが悪くなり、側に置いたコートをひっつかむと、僕は戸口へと向かった。

「不毛な恋はやめなよ? 結局はヒノキが辛い思いをするだけだ」

 背中にカイの言葉が突き刺さったが、振り返らずに部屋を出た。




「……急に改まっちゃって。一体なに?」

 僕と向かい合わせに座った茜が愛嬌じみて首を傾げた。

「もしかして。わたしと付き合ってくれるとか?」

 そう言いながらも、茜の表情はどこか固く、笑みも不自然だ。

 ちょっと話がある、と言ってその日の夕方、急に部屋へと呼び出したので、彼女は今まさに何を言われるのかを予期し、身構えていた。

 机上にある吸い殻のたまった灰皿と煙草、黒のスマホを見つめ、僕は重い口を開いた。

「……茜との」

「うん」

「今の、曖昧な関係を」

「……ん」

「終わりにしたい」

「……っ」

 茜は大粒の涙を滴らせ、既に泣き顔だった。