昨夜の幸子を思うと、まだ彼女は僕との恋愛を引きずっていて、僕を愛しているはずなんだ。
だからベッドの中であんなにも愛し合えた。
「帰る……」
まだ僕たちは完全には終わっていない。
僕は頑なにそう信じていた。
不意に、動揺した自分に決まりが悪くなり、側に置いたコートをひっつかむと、僕は戸口へと向かった。
「不毛な恋はやめなよ? 結局はヒノキが辛い思いをするだけだ」
背中にカイの言葉が突き刺さったが、振り返らずに部屋を出た。
「……急に改まっちゃって。一体なに?」
僕と向かい合わせに座った茜が愛嬌じみて首を傾げた。
「もしかして。わたしと付き合ってくれるとか?」
そう言いながらも、茜の表情はどこか固く、笑みも不自然だ。
ちょっと話がある、と言ってその日の夕方、急に部屋へと呼び出したので、彼女は今まさに何を言われるのかを予期し、身構えていた。
机上にある吸い殻のたまった灰皿と煙草、黒のスマホを見つめ、僕は重い口を開いた。
「……茜との」
「うん」
「今の、曖昧な関係を」
「……ん」
「終わりにしたい」
「……っ」
茜は大粒の涙を滴らせ、既に泣き顔だった。
だからベッドの中であんなにも愛し合えた。
「帰る……」
まだ僕たちは完全には終わっていない。
僕は頑なにそう信じていた。
不意に、動揺した自分に決まりが悪くなり、側に置いたコートをひっつかむと、僕は戸口へと向かった。
「不毛な恋はやめなよ? 結局はヒノキが辛い思いをするだけだ」
背中にカイの言葉が突き刺さったが、振り返らずに部屋を出た。
「……急に改まっちゃって。一体なに?」
僕と向かい合わせに座った茜が愛嬌じみて首を傾げた。
「もしかして。わたしと付き合ってくれるとか?」
そう言いながらも、茜の表情はどこか固く、笑みも不自然だ。
ちょっと話がある、と言ってその日の夕方、急に部屋へと呼び出したので、彼女は今まさに何を言われるのかを予期し、身構えていた。
机上にある吸い殻のたまった灰皿と煙草、黒のスマホを見つめ、僕は重い口を開いた。
「……茜との」
「うん」
「今の、曖昧な関係を」
「……ん」
「終わりにしたい」
「……っ」
茜は大粒の涙を滴らせ、既に泣き顔だった。



