ボーダーライン。Neo【上】

 不意に訪れた沈黙に、メールの音が割り込んだ。

 【え? 秋月くん? 何でアドレス知ってるの?】

 幸子からのメールに、返信する手間を省き、そのまま電話を掛けた。

 もう一度会いたい、と何の駆け引きもなく伝えるが、幸子は狼狽え僕の要望を突っぱねた。

 仕方なく「また連絡する」と言って、電話を切った。

「何やってんの、ヒノキ」

「え……?」

「今の桜庭先生でしょ?」

 昨日のクラス会で会ったのだと思い、カイはそれについては触れなかった。

「悪いけど。電話聞こえたよ?」

「……それは。別に」

 僕は眉を寄せ、首を捻った。

 カイが何を言わんとしているのか、分からなかった。

「あのさ。さっきのヒノキの口調。まるでストーカーだよ?」

 ーーストーカー??

「は? 何で俺が!?」

「先生結婚するとか何とか言ってたじゃん? もう追うのやめたら?」

 僕は僅かな不快感から頬を強ばらせた。

 カイは続けて言う。

「五年も前の話だし。少なくとも、先生の中ではとっくに終わってるん」

「分かった様な口利くなっ!」

 つい感情的に怒鳴りつけていた。

 僕と幸子の間には、僕ら二人にしか見えない愛情が渦巻いている。