ボーダーライン。Neo【上】

 僕は液晶に浮かんだアドレスをサイドボタンで、フッと消した。

 ーーこんな事なら昨日、婚約者の情報も聞いておくんだった。

 仕方無く、今聞いたアドレスへメールだけを送信した。

【渡した鍵を返して欲しい】

 短い文章で敢えて自分の名前を書かなかったが、内容で僕だと分かる筈だ。

 それに鍵だけじゃない。幸子と会ったら机上にある三万円も返すつもりだ。

 とりあえず今日は久しぶりのオフだし、部屋でくすぶっているのも勿体無い。

 着替える為に寝室へと足を向け、ふとベッドが視界に映る。

 幸子が包まっていたシーツを持ち上げ、顔を埋めた。

 ほのかに香る彼女の残り香に、ギュッと胸が締め付けられた。


 ***