ボーダーライン。Neo【上】

 コートのポケットから、入れっぱなしにしていた携帯を取り出し、有る人物に電話を掛ける。

 数回のコール音で繋がった。

『も、もしもし? どうした、檜』

 若干声色に笑みが滲んでいた。

 電話の相手は内田だ。

「……ああ、いや。悪い。急に」

 ちょっと聞きたい事があって、と迷わず用件を切り出す。

「桜庭先生の連絡先。知らない?」

『えっ??』

 言うまでもなく、内田は電話口で息を飲んでいる様子だ。

『……あー、えっと。俺は知らないけど奈々なら知ってる。今代わろうか?』

「頼む」

 奈々か、と思い、恐らく理由を訊かれるだろうなとため息をつくが。

 結論から言うと、奈々は何も訊かずに教えてくれた。

 幸子の番号とアドレス、それに加え、仕事先である弁当屋の住所を難なく入手し、僕はホッと胸を撫で下ろした。

 一瞬、今ここで彼女の携帯を鳴らそうかと考えるが。

 幸子の婚約者が、内田や奈々みたいにいつも一緒にいると不味い。