ボーダーライン。Neo【上】

 僕は気付いてしまった。

 たった一度の性交(セックス)で、また幸子を愛している事に。

「……うん。そうだね」

 幸子の呟きを最後に、僕の意識はフッと途切れ、闇に呑まれてしまう。

 暗転した視界に、ある情景が映し出された。

 見慣れたロンドンの街を、僕と彼女が手を繋いで歩いている。

 客観的に見る僕たちはとても幸せそうで、もう大丈夫、と誰かが耳元で囁いた。

 安堵に満ちた、僕自身の声だった。





「……ん、」

 すっかり明るくなった寝室で、僕は目を覚ました。片目だけを開け、ふあっ、と欠伸を漏らす。

 雲谷(もや)がかかったみたいに霞んだ視界。

 ピントを合わせる様に目をこすり、ムクリと起き上がる。

 頭の中はいつもよりスッキリし、体も軽かった。

 ーーよく眠れたな……

 久しぶりな感覚に暫くぼうっとする。

「……幸子?」

 昨夜(ゆうべ)の事を思い出し、慌ててベッドを確認した。

 隣りは既にもぬけの空だ。

 床に散らばった室内着を着て僕は寝室を出た。