唇に、柔らかく、温かなものが触れた。

 触れるだけのキスは、ややもすると深く激しさを増した。

 心臓の奥がキュンと痛んだ。

 秋月くんは両手であたしの頭を抱え、何度も何度も口付けを繰り返した。

 僅かに開いた唇の隙間に、舌が入ってくる。それに合わせて、あたしも欲望のままに応えた。

「……んっ、ふ、」

 息継ぎが苦しくて、時折声がもれた。

 彼の肩甲骨を手でなぞり、きつく抱き合ったまま、キスを繰り返した。

 ーー欲しいよ。秋月くんの全部が。

 やがて唇が離れると、あたしは熱っぽい視線で彼を見つめていた。お互いの顔は上気し、呼吸も乱れていた。

 頭の中に甘いしびれが走り、ぼうっとする。キスだけでこんなに気持ち良くなれるなんて、あなただけだよ。

 堪らずにあたしは言った。

「ね、秋月くん」

「ん……?」

 彼はあたしの髪に触れていた手を移動させ、頬を撫でた。

「一緒に帰ろ?」

 ーーあなたが欲しいの。

 あたしは彼を見上げ、頬にえくぼを浮かべた。

「うん」

 あたしの下心は許されるものじゃない。まだ未成年の彼と裸で抱き合いたいなんて、法律上では許されない。

 けれど、欲望にまみれたあたしは、もうそんな事なんてどうでも良かった。

 ただ彼が好きで、愛おしかった。

 秋月くんの全部を、あたしだけのものにしたかったんだ。


 ***