そして何より、異性関係に重きを置いているのか、浮気や二股など倫理に反する行動は有り得ないと豪語している。

 まだ付き合って間もない頃、とあるラーメン屋で彼は言った。

「女で浮気癖があるなんて、最悪だよな」

 当時の慎ちゃんにとっては、店のテレビでやっていた不倫騒動を見て、ポツリと呟いた独り言に過ぎなかっただろう。けれど、あたしは反応し、どういう事? と隣りに顔を向けた。

「いや。別に男だったら良いって訳じゃ無いんだけどさ。
 昭和では、浮気は男の甲斐性って言葉も有ったぐらいだし。男が浮ついた気を起こすのは、まぁ、百歩譲って理解出来るんだけど。
 女が旦那以外の奴とそういう事するのって……何か汚くて理解出来ないんだよな」

「……そう言われれば。そうだね」

 慎ちゃんの言葉には何処か腑に落ちるような説得力を感じ、あたしはグラスの水を見つめ、頷いた。

 そして、でも、と彼を見て二の句を継ぐ。

「あたしは浮気、しないよ?」

 あたしの言葉に虚を突かれたのか、慎ちゃんはギョッとし、いや、とあからさまに慌てた。

「幸子ちゃんがどうとかじゃなくて。単なる一般論、て言うか」

 彼の慌て方が可愛くて笑ったのを今でも覚えている。