ボーダーライン。Neo【上】

「なに~? もしかして、警戒してる? 別にこっち二人だからって何もしないよ? ただクラブに行って、飲むだけ」

 ただのナンパじゃない、と思った。

 ーーこれ、絶対ヤバいやつだ。逃げなきゃ。

 何も言わずに走り出そうとするが。男たちに腕を掴まれた。

「ちょっとちょっと、何で逃げるの~?」

「……や、離してっ」

「アハハ、聞いた? 離して、だって。声、ちょ~可愛い~」

 掴まれた腕を離そうとするのに、ビクともしない。男たちはあたしの反応を見て、嫌な笑みを浮かべている。

「いやっ、やめて下さいっ!」

「やめませ~ん。きみが行くって言うなら、離してもいいけどね~?」

 こんなのまるで誘拐じゃないか。もっと人通りのある、表通りに出ておけば良かった。

 それでも涙目で、必死に抵抗する。

「やだ、離してっ!」

 ーー秋月くん、秋月くん、秋月くん……っ!

 神様に祈る気持ちで目を瞑った。その時だ。

 不意に、ぐいっともう片方の腕を力強く引かれ、男の手が離れた。

「……え? きゃっ?!」

 バランスを崩してふらつくが、誰かの腕に支えられた。ふわっと香る柔軟剤の匂いで、それが誰かを理解する。