悪いけど、もうあなたの事は何とも思ってないから諦めて、なんて。そんな言い方をしたら、流石にまずいだろう。
「裏に番号載ってるから。また電話してきて?」
「う、うん」
半ば、押し切られる形であたしは名刺を受け取ってしまった。
午後七時になり、二次会の会場へと移動する。
コウちゃんと並んで歩きながら話し、ふと夜間作業中の工事現場が目についた。
作業着姿で白い息を吐き出す男の人を見て、自然と足が止まる。
サチ、どうした? と。コウちゃんがあたしの顔を覗き込むが、あたしの頭には最早秋月くんしか居なかった。
ーー会いたい。
衝動的な感情があたしを支配した。
結局のところ、あれからも彼は学校を休み続け、そのまま冬休みに入ってしまった。もう二週間、まともに顔を見ていない。
あたしは、キュッと唇をかんだ。
「ごめん。コウちゃん」
「ん?」
「これ。貰えない」
先ほど渡された名刺を鞄から取り出し、彼に返した。
「何で?」
コウちゃんは訳が分からないと言いたげに眉をひそめる。あたしは俯きがちに続けた。
「あたし。好きな人がいるの」
「……え」
「だから」
真剣そのものの瞳を向けると、彼は一拍黙り込み、やがて、分かった、と頷いた。
「裏に番号載ってるから。また電話してきて?」
「う、うん」
半ば、押し切られる形であたしは名刺を受け取ってしまった。
午後七時になり、二次会の会場へと移動する。
コウちゃんと並んで歩きながら話し、ふと夜間作業中の工事現場が目についた。
作業着姿で白い息を吐き出す男の人を見て、自然と足が止まる。
サチ、どうした? と。コウちゃんがあたしの顔を覗き込むが、あたしの頭には最早秋月くんしか居なかった。
ーー会いたい。
衝動的な感情があたしを支配した。
結局のところ、あれからも彼は学校を休み続け、そのまま冬休みに入ってしまった。もう二週間、まともに顔を見ていない。
あたしは、キュッと唇をかんだ。
「ごめん。コウちゃん」
「ん?」
「これ。貰えない」
先ほど渡された名刺を鞄から取り出し、彼に返した。
「何で?」
コウちゃんは訳が分からないと言いたげに眉をひそめる。あたしは俯きがちに続けた。
「あたし。好きな人がいるの」
「……え」
「だから」
真剣そのものの瞳を向けると、彼は一拍黙り込み、やがて、分かった、と頷いた。



