ボーダーライン。Neo【上】

「コウちゃんは。変わったね?」

 手に持ったグラスをコトンと置き、あたしは首を傾げる。

「昔より、オッサンぽくなった」

「ハイハイ、どうせ俺は老けましたよ~」

「ふふっ。嘘。相変わらずカッコいいね? モテるでしょー?」

 勿論、こんなの社交辞令だ。この人より数倍カッコいい人を、あたしは知っている。

「いや、全然? 高校ン時に比べたらノミ以下だ」

「アハハっ! その言い方っ!」

 それでも彼の口調が昔と変わらず陽気なのを懐かしみ、あたしは破顔した。

「そいやサチは高校教師、やってんだって?」

「え? うん、そうだよ。教科は英語で今二年の担任してるの」

 言いながら得意気にピースサインを向ける。

「いいよなぁ~、毎日女子高生が拝めるなんて」

「ちょっとコウちゃん!? うちは共学なんだけど??」

 何で女子高生限定、とぶつくさこぼすと、コウちゃんはアハハ、と笑った。

「冗談だって! ってかさ、やっぱ告白とかされたりすんの?」

 瞬間。秋月くんの顔を思い出し、ドキンとなる。平静を装い、あたしはおどけて言った。

「コウちゃんが京子先生、からかってたみたいに?」

「ハハっ、アレは俺だけじゃねーって。みんなやってたし」

 ふぅん? と笑い、再びお酒のグラスに口をつける。