ボーダーライン。Neo【上】

 だからだろう。八年も経てば、あたしだって少しはいい女になれるんだぞ、と。元カレを見返してやりたくなった。

 美波と待ち合わせをし、電車に乗りながら秋月くんの事を想っていた。

 ーーどうせなら、今日。秋月くんに会えたら良かったのに。

 いつもと違うあたしを、秋月くんにだけ見てもらいたかった。

 お洒落をしてきたあたしを見て、美波はあたしが幹事目当てで来たのだと勘違いしていた。

 確かに、当時のあたしは彼を見てはきゃあきゃあとはしゃぎ、夢中になっていたのだから、誤解されても無理はない。

 コウちゃんに言われたあの言葉も、自分を惨めにする気がして、誰にも話せなかったし。

 待ち合わせの五時丁度に、現地へ着き、日本料理が美味しい料亭で乾杯をする。

 あの頃より、大人っぽくなったクラスメイトとわいわいと談笑していた時。久しぶり、と言って元カレが話しかけてきた。

 コウちゃん、と呼んで、あたしは上品に笑う。

「よぅ、サチ。ってか変わんねーなぁ、その童顔」

 ーーあ、懐かしい。この笑顔。

 あの頃はこの笑みにドキドキしていたんだな、と思うと高二のあたしを可愛く思った。