ボーダーライン。Neo【上】

 あたしは手にした財布を再び鞄に入れ、ありがとう、と呟いた。

「じゃあ。職員室、戻るから」

 そう言ってくるりと背を向けた。

「あ、先生」

 不意に呼び止められて、振り返る。

「早退とか出来るんならさ。あんま無理しないで帰った方がいいよ?」

 好きな人に心配されているのが嬉しくて、あたしは顔をほころばせた。

「そうだね。ありがとう」

 秋月くんの姿をジッと見つめ、あたしは踵を返した。

 ーー今、気持ちを伝えたら。あたしはどうなるだろう。

 ぼんやりした思考で、今後の行く末を考えた。

 ーーううん、あたしだけじゃない。秋月くんは。どうなるんだろう? 生徒でありながら、教師のあたしと付き合うなんて、マイナスになるに決まってる。

 肩から下げた鞄を握りしめたまま、足を止めた。

 ーーそうだ。今、秋月くんと付き合う事になって、それが学校にバレたら。彼にも何らかの処罰が課せられるかもしれない。

 犯罪に足を踏み入れる一歩手前の状態。あたしは今そこに立っている。

 未成年の彼に手を出したら、あたしは法律上、立派な犯罪者だ。

 こんなにも彼を好きな状態で、果たしてあたしは、あと一年も気持ちを押し殺して平然と振る舞えるだろうか。

 あたしは目を伏せ、自嘲気味に笑った。