ボーダーライン。Neo【上】

「バイト見逃してくれた時、俺言ったじゃん? 飲み代立て替え…る、じゃなくて奢るって」

「……え」

「覚えてない?」

「お。覚えてる、けど」

「……ん?」

 彼は首を傾げ、にっこりと笑みを浮かべた。その仕草を見て、つい可愛いと思ってしまう。

「え。 今さら??」

「うん、そー。今さら」

 あたしは目を丸くし、次いで破顔した。

「なにそれっ」

 ーーやだ、もう。秋月くんてば。いちいちツボにハマるっ。

 あたしは彼を見上げ、穏やかに笑った。

「じゃあ、今回は……。秋月くんの、その言葉に甘える」

「うん」

「けどその代わり。ちゃんとお礼はさせて?」

「え」

 予想外だったのか、彼は目をしばたたく。

「あたしに出来る事なら。何でもするから」

 あたしは、ジッと彼を見つめた。秋月くんの出す要求なら、何でものむつもりだった。デートでも、キスでも、それ以上の事でも、何でも。

 秋月くんは、あっ、と何かを閃き、言った。

「じゃあ、俺。また先生の手料理、食べたい」

 予想外の答えに、今度はあたしがポカンとし、彼につられて頬を緩めた。

「分かった。じゃあ今度。秋月くんの好きなもの作るね?」

「うん」

 彼はあたしと違って、純粋だ。

 下心をむき出しにした自分が、少しだけ恥ずかしくなる。