ボーダーライン。Neo【上】

 熱のせいか、同時に吐息がもれた。

 早く、用件を済ませなければいけないのに、つい沈黙を守ってしまう。

「先生さ。今日何か、元気無い?」

「……え」

 あたしはノロノロと顔を上げた。

 秋月くんは再度、周りを気にすると、遠慮がちにあたしのおでこに手を当てた。そして、あ、と呟いた。

「先生、熱有るんじゃない? 帰らせて貰った方がいいよ?」

 心配そうに、あたしの目を覗き込む彼に、あたしはドキドキしながら答えた。

「ん、でも。お薬飲んでるから、大丈夫よ」

「でも」

「それに。明日はお休みだし」

 言ってから、また嘆息する。

 早くお昼を食べて薬を飲まないと、本格的にまずくなりそうだ。

「あ。えっと。昨日の事、なんだけどね。あたし、あんまり覚えて無くて」

 秋月くんは首を傾げ、うん、と相槌を打つ。

「今朝、お財布見たら全然お金減ってなくて。その、もしかして。秋月くんが立て替えてくれたのかなって、思って」

「え? あー……、うん」

 言いながら、彼はそっぽ向き、首の裏を掻いた。

「そう、やっぱり」

 あたしは安堵し、鞄からお財布を取り出した。

「じゃあ、今返すね? 幾らだった?」

「いや、いいし。そんなの」

「駄目よ」

「あ、ほら!」

 人差し指を立て、何かを思い出す言い方に、あたしは首を傾げた。

 秋月くんはやや声のトーンを下げて言う。