「本当に、別れるの?」

 何を意図しているのか、懇願にも似た瞳で圭介は同じ質問をする。

「だって。あたしはあなたの一番じゃないから」

「そんな事はない。一番だよ?」

「信じられない」

 頭は思った以上に冷静だった。感情的になる事もなく、ただ淡々と言葉が出た。

「あなたの事好きだった。だから……裏切られたって知った時、凄くショックだったし、腹立たしくもなった。

 でもね。多分、その状態がずっと続いたから慣れたんだろうね。あなたの事、何も思わなくなった。代わりにあたしは自分の今後をどうしていこう? ってそっちばかりに思い悩んで。
別れるのを先延ばしにしていたの」

 圭介は何も言わなかった。ただ自分の皿をジッと見たまま、眉間にシワを寄せている。

 別れたくない、と。思っているのだろうか?

 彼はすんなり受け入れると思っていただけに、あたしは首をひねった。予想外だった。

「……ごめん。俺がした事で幸子を傷付けたのは、反省してる。でも、俺は別れたくない」

 彼の真剣な表情に、あたしは目を見開いた。

「どう、して?」

「幸子が好きだから」

「でも。あなたは、奈美さんを放っておけないでしょう?」

「それは……」

 彼は困惑していた。目を逸らし、少しの動揺が見えた。