「あ、はい。僕はこの後ちょっと、予定が有るので」

 申し訳程度に眉を下げ、微笑んだ。

 当然ながら僕以外のメンバーは、皆パーティーに出席している。

「……そうですか」

 サイドで緩やかにアップした髪、そこから流れる後れ毛を揺らし、笹峰さんはがっかりした様子で呟いた。

 もしかして、と彼女は不安そうに目を上げる。

「恋人さん、ですか?」

「え?」

「だって……今日。クリスマスだから」

 笹峰さんは可憐な雰囲気をまとい、上目遣いに僕を見た。その表情に、かつての奈々が思い起こされ、ドキッとなる。

「ハハ、まさか」

 僕は目を細め、普段通りの作り笑いで答える。

「今日は高校時代の、男友達と会うんです」

「あ。そう、なんですか」

 彼女は視線を外し、小さく笑うと息を吐く。

 僕は続けて社交辞令を述べた。

「またご一緒させて貰う機会が有れば、その時は宜しくお願いします」

 一礼を残すと、笹峰さんは慌て、こちらこそ、と頭を下げた。

「それじゃあ」

 笑顔で会釈し、僕は彼女に背を向けた。