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 内田や奈々と再び縁が繋がったあの夜から、数日が過ぎた。

 事務所で取材の仕事を受けていた僕らは、順次にメイク室、撮影室へと入っていた。

 陸、陽介、カイと続き、最終の僕がメイク室から顔を出した時。

 廊下で待ち構えていたマネージャーの竹ちゃんが、ちょっと良いか? と言って手招きした。

「なに?」

「オフの件なんだけど」

 竹ちゃんは手に持った黒革の手帳に目を落とし、「ええと、檜は」と言って瞬きした。

 どうやら一人ずつ順番に声を掛けているようだ。

「希望していた五月二十日は、ちゃんと押さえておいた」

「サンキュ」

「それから次の休み、二十五日なんだけど」

 苦い顔をする彼に、ピクリと眉を動かした。

「ライブの後で疲れてると思うけど、急遽仕事が入った」

 やっぱり、と困った顔で息を吐く。

「そうなんだ? 何の仕事?」

 竹ちゃんからちゃんと説明があるだろうが、先回りして訊いてみる。

 それが、と眉をひそめる彼は若干言いにくそうだ。

「今週の二十一日に予定していたものが、二十五日に変更になった」

「え? それって、例の映画の?」

 僕は記憶を辿り、真顔で訊ねた。