「だって茜が俺のこと好きだとか言うから…」
「は?いつの話してんの?」
さらに意味のわからないことを口にする先生に呆れながらそう返す。
「私が"ともくん"って呼んでたのは小学生の頃の話だし
そのときの好きとはさすがにもう意味も心自体も変わってる」
そう言い切ると先生は口を大きく開け間抜けな顔をしている。
「ってか私彼氏いるんだけど」
私がそう言うとガラガラッと扉が開いて
「茜?遅かったから迎えにきた」
と聞き慣れた声が近付いてきた。
「職員室行こうとしたら茜が先生と美術準備室に入ってくとこ見たから大事なことなら大人しく教室帰ろうと思って少し会話聞いてた」
声の主は長田くんで、
彼はそう続けて私の手を取り引き寄せる。
「え、お前ら…?」
すっぽりと長田くんに収まり抵抗しない私を見て、先生は不思議そうに首を傾げる。
「うん、僕たち付き合ってるよ。
茜は僕のだから誰にも渡さない」
真剣な声できっぱり宣言する長田くんの表情は見えないけど私の手を握る長田くんの手に少し力が入った。
「じゃあそういうことなんで失礼しました〜」
長田くんはいつも通りの戯けた声で先生にそう言い、私を抱えて出口に向かって歩き出した。



