まもなく初めてのテストが始まるという時期になって、俺たちは普通に話すようになっていた。

学生課の廊下に置かれたコピー機の前で、彼女は他の男と大量の過去問のコピーをとっているところだった。

「なにやってんの?」

「過去問のコピー。ほしい? あげようか?」

「いる」

隣にいる男と一緒になって、彼女は懸命にコピーをとっている。

俺はその姿に、無性に腹が立った。

男が彼女の真横に寄り添う。

「あ、小銭あるよ、足りる?」

「じゃあもらっていい?」

男の手から渡された10円玉の数枚が、彼女の手に移る。

それをコイン投入口に放り込む横顔を、その男はチラリと盗み見た。

俺は手にしていた教科書の束を、彼女の頭にぶつける。

「痛た」

彼女はコピー機の蓋を開け、中の紙を入れかえた。

それを隣の男に渡して、次の紙をセットする。

男の手には、また次に彼女に渡されるべきものが用意されていた。

「なにやってんの」

「だから、過去問のコピーだって」

ムッとした俺を、隣の男が見上げた。

「じゃあ、後で連絡して」

それだけを言い残して、立ち去るだけで精一杯だったんだ。