「どうぞ、社長室はこちらです」

「……はい」

滝野さんが社長室に入る。

「社長、SHINEの山中様がお見えになりました」

「あぁ、通してくれ……」

滝野さんは、私に近づき、

「山中様、どうぞ」

私を案内した。

「では、私はここで失礼します。社長、何かあったら秘書室へご連絡を」

「あぁ、わかった」

滝野さんが出ていくところを確認し、私はひと呼吸した。

「初めまして、私、SHINEの山中と申します。この度はお忙しい中、時間を割いていただきありがとうございます」

「いいえ、こちらこそ、わざわざ来ていただきありがとうございます」

そういいながら、お互いに名刺交換をした。

塚本社長は、かなりの高身長だ。背の高い私がヒールの靴を履いていても、はるかに高い。

久しぶりの目線の高さにドキッとしてしまった。

仕事上、モデルさんや俳優さんに会う機会も多いが、なかなかこの目線はいない。

しばらく、今回の対談の話をし、内容を理解してもらい、承諾を得ることができた。

「今後の予定は、秘書の滝野に伝えておいてください」

「わかりました。報告は滝野さんにお伝え致します。今日は、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

塚本社長は、笑顔で握手を求めた。私も笑顔で返し、握手をした。柔らな印象できっとかなりモテるだろう。

内心は、私の鼓動が伝わらないかヒヤヒヤしていた。
彼は、高校の時から、ずっと好きだった初恋の相手、塚本蓮翔なのだから。

社長室を出て、ホッと一息つこうとしたが、すぐに滝野さんが出迎えてくれた。

「今日はありがとうございました」

私は、少し慌てながら話をした。

「こちらこそ、ありがとうございました」

「今後の予定などは、滝野さんにと言われましたので、これから連絡を取ることが多くなりますが、よろしくお願い致します」

「かしこまりました。こちらこそ、よろしくお願い致します」

R&Aから会社に戻る途中、私は、ようやく落ち着くことができた。

「……はぁ」

ドッと疲れが出た。
神様は、どうして再会させたのだろう?
私が1番会いたくなかった人に。
これから会う機会が増える。
憂鬱だ。
でもきっと、塚本社長は、気づいていない。私が高校の同級生、山中 秋帆だということは。