「はいっはいっ!
今すぐ行かせていただきますーっ!」
慌ててベランダから部屋の中に戻る。
もう、何が目的?
普通に怖いんですけど…
ま、でも、弱味探索にもなるし、
行ってみるか。
そうだ!いざという時のため、
武器持ってこ。
うーん、何がいいかなぁ。
あ、これでいっか。
ゴキブリ殺すスプレーのミニタイプ。
襲われたらこれを
あいつの顔に吹きかけるっと…
で、戦闘状態になった時のために、
ズボンに履き替えてっと…
クロックスを履いて、
駆け足で道路を渡り、
オートロックで
あいつに言われた部屋番を押すと、
無言で鍵だけが開いた。
やれやれ。
きれいなマンションだな。
「おーい、入るよー」
部屋のドアは開いてるから
勝手に入れと言われてたし、
そうしたんだけど、
もちろん、あいつは出迎えてくれない。
うん。当たり前ね。
「湊斗ー?」
リビングに続く廊下は電気がついてなかったから、
そろりそろりと慎重に歩く。
何なの、広すぎじゃん。
「おーい、湊斗ー?」
何してんだろ?
返事がないなって不思議に思ってたら、
突然後ろから抱きつかれて
耳元でこう囁かれた。
「俺はここだよ。
奈紗ちゃん」



