死のうと思った日、子供を拾いました。


「ずっと三人で暮らしてるのか?」

「……ああ。でも父親なんてもう会ったのもう半年以上前だし、殆ど二人暮らしだよ」

「何で帰って来ないんだ」


「だって本当の親じゃねぇもん。母親が俺を産んだとき結婚してた人。つまり俺からすれば他人なの。姉ちゃんにとっては本当の父親だけど。それなのに三人で暮らすなんて、嫌だろ。それに、今俺らが家出したからか母親が鬱になっててさ、その人面倒見てんだよ。それで母親の介護があるから安い家でしか暮らせないって言われたせいでこんなボロい家だし。水道代や電気代は払ってもらってるからまだいいけど、姉ちゃんのバイト代しか他に使える金ないんじゃ、洗濯機も冷房も買えるわけないし、本当にくそみたいだよ」

 あまりに酷い内容に言葉を失った。


 何で中学生が、こんな酷い目に遭っているんだ。とても信じられない。


「酷い話すぎてびっくりしただろ?」
 カーテンを開けて顔を出し、愁斗は言う。愁斗と目が合う。愁斗の瞳は生気がなく、光が宿っていなかった。
「……ちゃんと話したぞ。これで満足か? 俺らを救いたいとか思ってるんじゃないなら、今すぐ帰れ。それで忘れろ。俺らのことなんか」

「愁斗」
「気安く呼ぶな。自分のことで精一杯の癖に」
 そういうと、愁斗はまたカーテンを閉めてしまった。

「ごめんなさい。あの子、凄い態度悪くて」
 真希さんがダイニングルームに戻りながら言う。

「……いえ」

「さっ、どうぞお座りください。立ち話して疲れたでしょう?」
 ちゃぶ台の前に枕を置いて、真希さんは笑う。

「ありがとうございます」
 お礼を言い、枕の上に腰を下ろした。