死のうと思った日、子供を拾いました。


 十分くらい経つと、一から十三までのトランプのカードが横に並んだのがほぼ同時に二つできた。

「愁斗、それ見れば7×4くらいまでは解けると思うんだけど、わかりそう?」

「七が二つあるから数えて……7×2は14!」
 一から七までの数字がかかれたトランプが二列に並んでいるのを見て、愁斗は声を上げた。

「そ。7×3が21なのは覚えてるよな? そしたら、7×4は?」

「それ、ここに答えある?」
「答えはないけど、答えに近い数字は何かを数えれば見つけられる」
「トランプの枚数?」
「愁斗がそう思うなら、それを数えてみな」
「二十六枚……これが近い数字?」
 数えただけじゃ後何枚あれば七の倍数になるかわからないか。

「愁斗、七枚が二列と、何枚が二列で二十六だ?」
「六枚が二列……あ、2+26は28!」
「ああ、7×4は28だ。じゃあ再開するか。7×8までは七並べでわかると思うから」
「うん!」

 そのまま続けていたら、七の段はちゃんと解けるようになった。

 あと八の段と九の段か。

 この調子なら明日か明後日くらいには掛け算をマスターできるようになりそうだな。そうなったらすぐに学校に行ってテストを受けさせて、点数がよかったら水族館か遊園地にでも連れて行ってやるか。

 俺、楽しいと思えるのかなあ。
 一人はつまらない。それでもやっぱり、そういう明るい場所に行くのはためらいがある。夏菜がいない世界では行っても楽しめる気がしないから。
「ただいまー」
「あ、お帰り姉ちゃん!」
 トランプを大急ぎで片付けてから、愁斗は玄関に行った。
「お帰りなさい、真希さん」
「はい。ドリル進みました?」
「はい、だいぶ。明後日くらいにはテストを受けに行っても大丈夫だと思います」
 真希さんが嬉しそうに手を叩いた。
「本当ですか! じゃあテスト終わったら三人でどこかに遊びに行きましょう! 愁斗はどこに行きたい?」

「どこも行かなくていい」
「何言ってるの。遠慮なんてしなくいいんだよ。ちゃんと勉強頑張ったんだから」

「でも同級生にはまだまだ追いついてないじゃん」
「だからって追いつくまでお祝いしなかったら、愁斗の心がボロボロになっちゃうよ」

「どこでもいいの?」
 真希さんを見て愁斗は首を傾げた。

「もちろん!」
「じゃあ、遊園地行きたい」
「わかった。チケット取っておくね」
 愁斗の頭を撫でて、真希さんは言った。