死のうと思った日、子供を拾いました。

 朝ごはんを食べて洗い物を終えると、愁斗はすぐにドリルと向き合った。

 足し算と引き算は解くのが早くはないけどちゃんと解けていたから、午前中のうちから掛け算をやることになった。

「流希、ここわかんない」

 七の段のマスを指さして愁斗はいう。7×1しか解けてない。七の段って確か掛け算で一番難しいって言われてる段だよな。

 どうやって教えよう。愁斗も楽しめる方法で教えたいんだけど。

 あ。……七並べはどうだ?

「愁斗、七並べって知ってるか?」

「何それ?」

 お、予想通りの反応。分からないならちょうどいい。

「掛け算の七の段を覚えるのにちょうどいい、トランプのゲームだよ」

「二人でできんの?」

「ああ。やってみるか?」

「する!!」

 よし、食いついた。

 愁斗は知らないことはなんでも知りたがってくれるから、提案がしやすいんだよな。

「じゃあやろう」

 戸棚から夏菜のトランプを取りだして切った。十分に切ったら同じ枚数になるように二つに分けて、片方を愁斗に渡す。

「これどうすんの?」

「愁斗七ある?」

「うん。スペードの七がある。あ、クローバーも」

「じゃあそれを床に縦に並べて置いて。残りの七は俺が持ってるから、それは愁斗が並べたのの後ろに置くな」

「うん」

「愁斗、六か八ある? あるならそれを同じマークの七の隣に置いて」

 愁斗がダイヤの六を七の隣に置いた。俺がダイヤの五をその隣に置くと、愁斗は声を上げた。

「あ、これそのまんま順番に並べればいい?」

「ああ。それで、自分が持ってるカードが早くなくなった方が勝ち」

「ジョーカーは?」

「それはなんの数字の隣においてもいい。たとえばジョーカーと7を一緒に持ってたら、それを一緒に出して並べられる」

「これ、勉強になんの?」
 瞳を大きく見開いて、とても不思議そうな顔で愁斗は言った。

「ああ。とりあえずそのまま一列できるまでやってみればわかると思うから、続けて」

「分かった」

 愁斗が並べたのの隣に、ジョーカーとハートの十を置いた。

「あ、ジョーカーだ! 本当に二枚出してんじゃん!」

「そ。こうやって使う」

「流希、これどうすんの?」

 愁斗がハートの九がかかれたトランプを俺に見せた。

「それはジョーカーと交換だな」

「交換した後は?」

「愁斗が好きな時に使っていい。ジョーカーが置かれた場所に、数字のトランプを置いた人のになるから」

「じゃあこれ俺がどっか置いて、流希がそこに数字の置こうとしたら、また流希のになんの?」

「そそ。理解が早いな」

「別に」

 頬を赤くしている愁斗を見ながら、そのままゲームを続けた。