死のうと思った日、子供を拾いました。


「取り柄ならあるだろ」

「例えば?」
「ウザいくらい素直なところと姉想いなところと、好きじゃないやつにもちゃんと謝罪できるところ」

「好きじゃないやつって、あんた?」
 愁斗は嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「ああ。だってお前、俺のこと嫌いだろ?」
 自分で言ったのに少しだけ傷ついた。

「別に嫌いじゃない。よくおごってくれるし」
「ハハ! そこかよ!!」
 つい声をあげて笑ってしまった。
 本当に正直にもほどがある。

「やっぱりあんたは赤ん坊みたいだ」
「え? 今そう想うのか?」
「ああ。つねに静かなのかと思ったら急に泣いたり笑ったりするから、そう見える」
「急に泣いたのはお前だろ?」
「さっきのはたまたま! いつもあんななわけじゃない」
 顔が真っ赤だな。

「いつもあんな感じな方が真希さんは楽なんじゃないか」

 愁斗は素っ頓狂な顔をして身体を起こした。

「え? どういう意味?」

「ふとした瞬間に感情を爆発させて涙を流すくらいなら、いつも泣きたい時に泣いた方がお前も楽だし、真希さんも傷つかずに済むんじゃないかってことだ」

「でもそれじゃあ俺ただでさえ迷惑かけまくってんのに、余計かける羽目になる」

「とことんかけろよ、弟なんだから」

 愁斗はだるまみたいに腰を曲げて体育座りをして、両足の上に頭をのせた。

「できない。俺、わかんない。姉ちゃんに甘える方法が。学校で嫌なことがあっても、姉ちゃんに大丈夫って聞かれたら、いつも大丈夫って言っちゃう。本当はそうじゃないのに」

 身体が震えている。泣いているのか?
 暖房の風に煽られて、愁斗の髪が揺れた。黒髪の奥には、安物の染髪剤でインナーカラーをしているのかと疑ってしまうくらい傷んだ白髪が隠れていた。ざっと十本くらいは白い。

 慌てて愁斗は両手で頭を抑えた。見られたくも触られたくもないのか。俺は白髪があることに決して気づいていないふりをしながら、話を聞いた。