死のうと思った日、子供を拾いました。

「愁斗、そんな言い方」

「黙れ! いつも赤ん坊みたいに泣いて誰かに助けを求めてるやつに説教なんて死んでもされたくないんだよ!」

  テーブルに置かれていたオレンジジュースをぶっかけられて、服と顔が濡れた。
 は? 
 寒。
 
「……お前の方がよっぽど子供だろうが! こんなことするまで我慢してんじゃねぇよ!」
 店中にいる人が俺達を見た。
 しまった。デカい声出しすぎた。

 店員が慌てた様子でふきんを持ってきて、俺に声をかけてくる。頭を下げてからふきんを受け取って顔を拭いた。

「流希、大丈夫か?」
 新太も心配そうに声をかけてくれた。

「ああ。新太、悪い。これで会計してきてもらえるか」
 椅子の上に置いていた鞄から財布を抜き取って新太に渡した。

「わかった」
 新太がテーブルを離れるのを確認してから、愁斗の様子を伺う。

 愁斗の瞳から大粒の涙が溢れていた。
 誰がどう見ても酷いことをしているのは愁斗の方なのに、愁斗はまるで誰かに虐められたかのような、とても傷ついた顔をしていた。

 何でお前がそんな顔をするんだよ。

「あんたを見ていると腹が立つ。家族も親友も頭の良さも、……俺が欲しいものを全部持っているくせに、俺より辛いみたいな顔をしてんじゃねぇよ! 姉ちゃんだってそうだ! 俺が学校をさぼるたびに面倒くさそうな顔をして……。勉強が嫌いなわけじゃない。でも保健室にときおり来る生徒達の会話が理解できないのを実感するたびに絶望して、窓から体育の授業をしているところが見えても、なんの競技をしているのかてんで理解できなくて。そんなんで学校に行けるほど、俺は強くないんだよ!!」

 幼児が声を押し殺して泣いているかのように、決して喚かずに愁斗は泣き続けた。

 愁斗にとって、学校は全生徒の中で自分が一番勉強ができていないのを嫌でも自覚してしまう場所だなんて考えもしなかった。
 ……でも言われてみれば確かにそうだよな。みんなはちゃんと小学校を卒業して中学校に進学したのに、愁斗は中学生になってから学校に通っているのだから。

「ごめん、愁斗。私ずっと前に私が倒れたことを気にして行かないでいてくれているのかと思ってた。だから私が元気に行きなっていえば、いつか行くようになると思って」

「あんたのそういう鈍さがムカつくんだよ! 仕事があるから、留年をしないで高校を卒業したいからって、俺の気持ちを考えようとも保健室にいる先生や担任に事情を聞こうともしないくせに、母親づらしてんじゃねぇよ!!」

 頭に血が上って、俺は愁斗の頬を叩いた。

「お前が一番わかってるだろ! 愁斗のために電話する時間も作らないで、一生懸命そういうことをしてるんだって!」

 頬に手を当てて、愁斗は俺を見つめた。瞳が充血して、頬が真っ赤に腫れている。