死のうと思った日、子供を拾いました。

「愁斗、さっきのはただの冗談だよ?」
 え、冗談だったのか? 最悪だ。どういうなんて聞くんじゃなかった。恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい。

「アハハ。俺のノリに付き合ってくれてありがとうございます、真希さん」
「いえ、誰かを立てるのは慣れてますから。仕事で」

 俺、夜の仕事の時に真希さんが接待するやつらと同等に扱われたのか?
 ああもう。本当に最悪にも程がある。なんであんなにどもって聞く前に、冗談だと気づかなかったんだよ。

「流希顔真っ赤」
「う、うるさい! 誰のせいだと思ってんだ!」
 思わず拳を突き出したら、新太は片手で軽々とそれを受け止めた。

 スマホが鳴った。
 手を下ろしてからズボンのポケットからスマホを取り出して電源を入れた。

『嘘ですよ。夏菜さんの死を流希さんが乗り越えたら、二人で出かけても構いません』
 メッセージアプリで、真希さんからそう連絡が来ていた。
 スマホが手のひらからすべり落ちた。画面の上に貼ってあるガラスカバーが割れて、欠片が床に散らばる。

「「うわ、流希何してんだよ!」」
 新太と愁斗の声が被った。

「怪我してませんか?」
 真希さんが俺のすぐそばに来て、俺の手や足を心配そうに覗き込む。

「すみません。だ、大丈夫です」
「ふふ。可愛いですね、流希さん」
 耳元で囁かれた。吐息が耳にかかって、心臓が音を立てる。どうしよう。真希さんから目が離せない。なんでだ。俺は夏菜が好きなハズなのに。

「か、可愛くなんか」
 離れようとしたら手を掴まれた。

「えー可愛いですよ? 食べちゃいたいくらい」
 また耳元で囁かれた。肩が震えて、心臓の鼓動がさらに早くなる。
 なんで。俺は女の人が近くにいるからこうなっているだけで決して真希さんに心を奪われたわけじゃない。それなのにどうして、まだ動けずにいるんだ。