死のうと思った日、子供を拾いました。

「俺と兄弟になりたいか? 流希」
「いや、新太は親友のままがいい」
 新太とは会った時からずっと友達だから、今更兄弟になっても兄や弟だと実感する場面がない気がする。

「じゃあ真希さんと結婚すれば? そうしたら愁斗は義理の弟になるぞ?」
「俺にはもったいなさすぎる」
 思慮深くて、いつも落ち着いている真希さんにはもっとふさわしい相手がいるハズだ。それに真希さんは気品があって素敵だと思うけれど、俺はまだ新しい恋人を持つ気にはなれない。

「アハハ! 確かに今のお前じゃダメだな」
 俺を見て、新太は思いっきり声を上げた。

 俺はつい眉間に皺を寄せて、新太を見た。
 笑ってしまうくらい釣り合ってないなら、冗談でも結婚なんて言うなよ。

「そうですね。今は、ダメですね」

『今は』をかなり強調された。
 もしかして、ダメじゃなくなる可能性があるのか?

「え、あの、それってどういう」
 俺は決して真希さんが好きなわけじゃない。それでも思わず、意図を探りたくなってしまった。
 俺が好きなのは今も昔も夏菜だけだ。でも、俺の何かが変化したら彼氏にしてもいいと真希さんが思ってくれているなら、その理由が知りたい。
 嫌いな人にそう思われているのは嫌だけれど、真希さんにそう思われているのは気分がいいから。

「流希さんが夏菜さんがいなくても問題なく生きていけるようになったら」
「そうなってもあげねぇよ!!」
 真希さんの腰に両腕を回すと、愁斗はまるで猫が威嚇をするかのような獰猛な顔つきで俺を見つめた。

「アハハハ! こりゃあ一筋縄じゃあいかねぇな」
「愁斗、恋人を決めるのは私だよ?」
「そんなのわかってる! でもこいつは嫌だ!」
 指を刺された。

「愁斗、とりあえず手を降ろそうか」
 真希さんは笑顔でそう言って、愁斗に気をつけをさせた。

「……姉ちゃんはアイツが気になってんの?」
 真希さんの服の裾を掴んで、愁斗は唇を噛んだ。強く噛み締めたせいで、唇から血が流れて愁斗の顎に垂れた。
 真希さんがポケットからハンカチを取り出して、愁斗の顔を拭った。