死のうと思った日、子供を拾いました。


「違う。流希はちゃんとお前のことも考えてその菓子を選んだ。お前に流希がかけた時間を無駄にするな。時間は有限なんだから」
 俺の代わりに愁斗が否定してくれた。

「愁斗、どうして」
 なんでさっきから俺の味方のような発言ばかりしてくれるんだ。

「夏菜のことしか考えてなかったら俺にアイスを奢ろうともしなかったし、俺が友達を作りたがっていたことにも気づかなかっただろ。それともお前は二つのことを一緒に考えられるのか?」
 俺の味方をしようと思って言っているのではなくて、ただ事実を言っているだけなのかもしれない。
 俺の味方でいたいなら、きっともう少し優しい言い方をしてくれるハズだ。

「いや考えられない。ありがとう」
「別に。俺は思ったことを言っただけだから」
 やっぱり俺を庇ったわけではないのか。
「確かにそれは早乙女のことだけを考えていたらできなそうだな。矢野、やっぱりもらっていいか?」
「はい」
 もう一度菓子折りを差し出すと、宮本教授はそれをしっかりと受け取った。

 挨拶をすると、俺達はすぐに研究室を出た。
 加藤教授の研究室は確か五階だったっけ。
 四人で五階に向かっていると、新太が急に口を開いた。
「いやーさっきの愁斗かっこよかったなあ」
「あ?」
 真希さんは眉間に皺を寄せて愁斗を見た。きっと態度の悪さが気になっている。
「時間は有限なんて社会人になってもなかなか言わないから、ついそう思って」
 愁斗を見下ろすと、新太はワシャワシャと愁斗の頭を撫でた。
「うざい」

「いつからそう考えていたんだ?」
 俺が聞くと、愁斗は足を止めて下を向いた。
「中学の始業式の翌日。その日俺生まれて初めて授業受けたんだけど、そしたら知識が同級生と比べると全然ないのに、勉強をする時間は同級生と同じくらいしかないのがよくわかった」
 現実がわかるのが遅すぎる。けれど愁斗の家庭環境ならそうなって当然なのかもしれない。