「あ、流希さん作り笑いしてない。そっちの方が素敵ですね、笑顔」

「え、い、いやそんなことは」
 新太は眉間に皺を寄せて俺と真希さんを見た。

「真希さんまさか狙ってるんすか? やめといた方がいいですよ、こんな根暗」
「おい、誰がだ」
 お前は元から暗い性格なわけではないと知っているだろうが。

「流希がだけど? こんな頭の固いど真面目を彼氏にするくらいなら俺にしときましょうよ」
「高校生を口説くな、このアホ」
 新太の頭を手の甲で叩いた。

「いた。本当にお前って冗談通じねぇよな」
 崩れた髪を触って直しながら新太はぼやく。

「はあ。俺じゃなくて真希さんが冗談だとわかってないから叩いたんだろうが」
 俺は新太のこういうふざけたノリに慣れているけれど、真希さんはまだ慣れていないから新太の様子だけを見て自分が本気で狙われているのかを判断するのは難しいハズだ。それなのにチャラい誘うような言葉なんて投げかけるべきじゃない。

「ああ、そっか。すみません」
「いいえ。本当に流希さんとは正反対のお友達ですね」
 真希さんはクスクスと笑いながら首を振った。

「ああ、はい。俺もそう思います。だからこそこいつに救われることも多いですけど」
 新太の前で言うのが恥ずかしくて、声が小さくなった。

「それは素敵ですね。あの子にもそういう友達ができるといいんですけど……」
 愁斗を見つめながら真希さんは呟く。

「できますよきっと」
 根拠なんてない。けれど信じることは自由なのだから、別に信じたっていいだろう。
「愁おもちゃ開けよー?」
 男の子が愁斗に声をかけた。
「うん」
 男の子はカブトムシのおもちゃの入った袋を、愁斗は水鉄砲の入った袋を持っている。お風呂で使うのか。
 
 二人は顔を見合わせてから袋を開けた。