「流希さん、お子様ラーメン頼んであげてください」
「え、でも」
「私に良い考えがあるんです」
 真希さんは俺を見てウィンクをした。一体何を考えているのだろう。

 真希さんが肩にかけていたバックから財布を取り出そうとする。

「いいです、今日は俺が払います」
 首を振ってから、俺はラーメン屋に行った。

「あ、流希さん!」
 真希さんが小走りで俺の後をついてくる。俺を追ってどうするんだ?

「すみません、お子様ラーメンとしょうゆラーメンを一つずつお願いします」
「かしこまりました。えっとおもちゃのカゴは……。あ。すみません、今はまだ他のお客様のところにあるので、少し席でお待ちいただけますか?」
 三人家族の席を眺めてから、店員は申し訳なさそうに頭を下げる。

「あの、そこのご家族に同意をいただけたら、一緒に選んでもいいんですよね?」
 店員さんを見て真希さんは尋ねる。
「あ、はい」
「そしたら選んで良いか聞いてみますね。ありがとうございます」
 真希さんは愁斗の手を引いて、三人家族のそばに行った。
 ああ、なるほど。
 俺は会計をするとすぐに真希さん達の様子を見に行った。

「あの、この子も一緒に選んでもいいかな?」
「うん、いいよ‼︎」
 真希さんが聞くと、子供はすぐに頷いてくれた。

「え、姉ちゃん俺頼んでない」
「うん。でも欲しいんでしょ、友達」
 真希さんは愁斗を見て得意げに笑った。

「選ばないのー?」
「え、選ぶ」
 頬を真っ赤にしてから、愁斗は子供に近づいた。

「姉に見抜けないことはないな」
 俺の隣に来て、新太はクスクスと笑った。
「ふ。そうだな」
 作り笑いをして、俺は頷いた。

「見抜けないこともありますよ。私も完璧ではありませんから。少なくともお二人よりは愁斗のことをわかっているつもりですけど」
 得意げな様子で真希さんは語った。

「ハハ、そりゃそうだ」
 俺と顔を見合わせてから新太は快活に笑った。

「確かにな」
 真希さんと新太を見ていたら自然と口元が綻んだ。