死のうと思った日、子供を拾いました。

「早く来い」
「愁斗、いつまでもそんな態度だともうアイスはなしだからね?」
 俺を睨んで、愁斗は口を閉じた。なんで俺? 真希さんのことは睨みたくないからか?

 俺は何も言わずに愁斗の隣まで足を進めた。
 アイスはチョコにバニラに抹茶にあずきと様々な種類があった。

「どれが食べたいんだ?」
「チョコバニラミックス」
 ミックスね……。小学生の頃は俺もよくミックスを食べていたなあ。一口で二つの味を楽しめるのが好きで。
 俺は店員に声をかけて、コーンのチョコバニラミックスを一つ注文した。

「自分の分はいらねぇの?」
「ああ」
「こういうのくらい食べれば?」
 アイスを舐めてから愁斗は俺に目を向けた。
「なんで」
「欲がないあんたでもラーメンやパスタよりは食べやすそうだから」
 食欲って言いたいんだろうか。

「欲だけだと何がないのかわからない」
「え?」
「欲には物欲に色欲に食欲と、色んな種類があるんだ」

「色欲って何」
 教えていいのか?

「子供は知らない方がいい」
「子供じゃねえし」
「少なくともそうやって誰かが言うことにいちいち強気で反応しているうちは知らなくていいことだ」
 教えたところで真希さんは怒りはしないとわかっていたが、適切な言葉が思いつかなかったから咄嗟にそんなことを言った。

「じゃあお前にないのは食欲?」
「ああ。……ふ。愁斗、ついてる」
 愁斗の頬にチョコアイスがついていた。俺は頬に手を近づけてそれを取った。
 ポケットからティッシュを取り出している俺を見て、愁斗は口を開いた。
「それくらい舐めれば?」
「……そうだな」
 指を舐めたらチョコレートの味が一気に口の中に広がった。アイスが冷たくて、頭の中がすーっと冷えていく。

「ん」
 愁斗は背伸びをして、アイスを俺に向けた。

「え、食べていいのか?」
「うん。奢ってくれたから」
 思わず口が開いた。
 こんなに可愛らしい一面もあるのか。

「早く食えば?」
「ふ。ありがとう」
 愁斗がもう背伸びをしなくていいようにコーンに巻いてある紙に手を置いてアイスごと自分のところに持っていってから、一口舐めた。

「美味いな」
 俺がアイスを渡そうとすると、愁斗は突然目を見開いた。
 
「どうした?」

「あはは! 流希もついてんじゃん!」
 アイスを受け取ってから、愁斗は声を上げた。
「え、あ……」
 慌ててポケットからスマホを取り出してインカメで自分の姿を確認したら、口の端にバニラがついていた。急いで舐めて、スマホをポケットにしまった。
 愁斗が意地の悪そうなニヤニヤとした顔をしながら俺を見ている。
「なんだよ」
「まだついてる」
「え、嘘」
 思わず顔を触って確かめる。
「うっそー」
 コーンを噛み砕いてから、愁斗は歯を出して笑った。
「なっ?」
 大人気ないイタズラに腹が立って、大きな声が出た。