死のうと思った日、子供を拾いました。


「好き放題言ってごめん。俺、怖いんだ。これ以上傷付いたら、本当にお前が死んでしまう気がして」

「新太、俺は……」

 新太はバツが悪そうに、俺から目を逸らした。

「悪い。本当に死ぬつもりならきっと、真希さんや愁斗に会っても死んでるし、生きるつもりなら二人に会っても生きてるよな。それに失礼だよな。二人のことを余り知らないうちから、一緒にいたら幸せになれないと決めつけるなんて」

「……まあそうかもな。でも、新太の言いたいこともわかる。確かに二人といたら、事件に巻き込まれそうだよな。それでも今は、まだ一緒にいたいんだ。今は一人でいたらすぐに死んでしまう気がするから」

「……そうか」

「ありがとう、心配してくれて」

 首を振ってから、新太は口を開いた。

「思ってもいないことを言うな。感謝する気になれていないうちからそういうことを言っていると、感謝できないことも悪いことに思えてくるから。本当はそんなこと全然悪くないのに」

「……本当にお前は優しいな」

「だって今は、死ぬなって言われたり、感謝しなきゃいけないような言葉を言われたりしたら苦しいだろ? それならせめて俺だけは、お前が苦しまない言葉を言おうかと思ってな」

「ふ。お前に彼女がいないのが信じられないよ」

 新太の親切心がありがたくて、つい口角が上がった。

「俺もつくづくそう思うわ。俺の運命の人は一体どこにいるんだろうな?」

「どこにもいないんじゃねぇの」

 背後から愁斗の声がした。思わず後ろを向いたら、目の前に愁斗と真希さんがいた。

 あ、もう抱擁はいいのか。

「愁斗、今なんて言った?」

 新太が眉間に皺を寄せた。

「だから、どこにもいねぇって」

 さすがに失礼すぎないか?

「愁斗、そんなわけないでしょうが! 謝りな!」

 真希さんは愁斗を見て声を上げた。

「えぇ……」

 愁斗は嫌そうに肩を落とした。面倒くさいと思っているのかもしれない。そもそもそんなことを思うくらいなら、憎まれ口を叩かなければいいのに。まぁ、反抗期の愁斗がそんなこと出来るわけないか。

「真希さん、いいっすよ。生意気な子供の冗談だと思っとくので」
「ダメですよ。それじゃあ全然愁斗のためになりません。常識は覚えさせないと。勉強はできなくたっていい。けれど常識は身につけないといずれ苦労しますから」

 確かにそれはそうだな。

「愁斗、謝れ」
「お前までそう言うのかよ! はあ。……ごめん」
 俺を見て叫んでから、愁斗は頭を下げた。

「いい、気にしてねぇよ」
 愁斗の頭をぐしゃぐしゃと撫でて、新太は笑った。