死のうと思った日、子供を拾いました。


「お待たせしました、行きましょう」

 真希さんのそんな言葉に頷いて、俺達は玄関に行った。

「新太、まさか……本当に肩車していくわけじゃないよな?」

 新太は愁斗が着替えると言った時だけ愁斗を降ろして、着替え終わったらまた肩車をしていた。そして今も、愁斗が靴を履いたらまた肩車をしようとしていた。

「してくけど?」

「……当たり前のように言うな。俺は目立つのは嫌いなんだ」

 新太の頭を叩いて吐き捨てる。

「お前が嫌いなのは夏菜先輩がいない世界で目立つことだろ」

「え」

「だって先輩大学じゃ、学校一可愛いって言われてたじゃん。その彼氏だったから、お前大学じゃかなり目立ってただろ」

 確かに大学にいた時は、人の目線なんて気にならなかったな。

「はあ。本当に、俺のことでお前に見抜けないことは一切ないよな」


「もちろん」

 俺の瞳を見て、新太は得意そうに歯を出した。

「褒めてるんじゃない。呆れてるんだよ。……暗い社会人を相手にする暇があるなら、とっとと恋人でも作って結婚しろ」

「余計なお世話だ!」

 新太は勢いよく俺の肩を叩いた。

「フ。漫才かよ」

「お、愁斗面白い?」
「まあ。新太女いないんだ?」
「そうそういないんだよなあ。なんでだろうな、こんなにいい男なのに」

「そういうところがダメなんだよ馬鹿」

 愁斗が新太の足を踏んだ。

 うわ。つくづく思うけど本当に躾がなってないな。

「愁斗!!」
 真希さんが叫ぶと、愁斗はすぐに踏むのをやめた。
 真希さんが言うことには従うんだよなあ。学校に行くこと以外のことなら。

「はあ。愁斗、明日はちゃんと学校に行ってね。それが守れるなら、今日は一緒に買い物行って一緒に帰ろう。ね?」

「え」
「わかった?」
「……うん」
 なんで学校のことになるとちゃんと頷かないんだ? 保健室に登校するなら授業は愁斗のペースで進むだろうから別に、同級生に追いつけてないのは大した問題じゃないよな。
 真希さんの体調が心配なのか?
 それとも何か授業や真希さんのこと以外に行きたくない理由があるのか?

「いい子」
 真希さんが愁斗を抱きしめて、頭を撫でた。

 思春期の子供はこういうところを見られるのを嫌がるかと思って、俺は新太と一緒に先に外へ出た。