死のうと思った日、子供を拾いました。


「真希さん、支度しましょう。愁斗のことはこいつに任せて大丈夫なので」

「こいつって……まあいいけど。さて愁斗、何して遊ぶ?」

「勉強教えてあげてください。もうすぐ掛け算のテストがあるので」
 掛け算か。懐かしいな。

「テストはどこでするんですか?」
「保健室です。まあ、学校に来るのに慣れてきたら、今の実力を調べるためにしようかって話になっているので、テストが低かったら何かがあるわけではないんですけど」

「そうなんですか。じゃあ流希、一緒に教えようぜ。支度しながらでいいから」
「え、なんで俺が」
「だってお前理系だから、文系の俺より掛け算教えるの得意そうじゃん?」
 掛け算なんて文系理系関係なく教えられるものじゃないか?

「別に上手くはないと思うけど」
「まあとにかくお前も付き合えよ。一人で過ごしてたら、夏菜先輩のことばかり考えちまうんだから」
 それは否定できないな。
「わかった」
 俺は大人しく新太の意向に従った。
 
★★

「愁斗、2×2は?」
 クローゼットを漁りながら、俺は呟いた。
 何を着よう。
「4。初歩すぎ」
「じゃあ2×3は?」
 新太は勢いよく声を上げた。
「6」
「あれ、出来てるじゃん。そしたら2×10は?」
 愁斗の足をゆさゆさと撫でながら、新太は首を傾げた。
「え……18?」
「惜しい! それは2×9だな。十個ならもう一回2を足さないと」
 新太は愁斗を馬鹿にしないで、元気よく教えた。
「わ、わざと間違えたんだよアホ!」

「へぇ? じゃあ4×6は?」
「……22?」
 またダメか。
 二回連続で答えを間違えていたから、新太はつい目を見開いていた。

「4×3は?」
「12」
 即答された。
 両方の位が少なければできるのか。

 クローゼットからジーパンとTシャツを出すと、俺はすぐに寝巻きを脱いでそれに着替えた。