死のうと思った日、子供を拾いました。

 キッチンに行くと、俺はすぐに卵焼きと味噌汁を用意した。

 制服を着た愁斗が真希さんと一緒にキッチンまで来た。

「いだだきます」
 俺がテーブルにご飯と箸を置くと、愁斗はそんなことを言って食事を始めた。意外とこういうことは言えるんだよなあ。全く言えなそうに見えるのに。

 卵焼きを口に運ぶと、愁斗は嬉しそうに目を輝かせた。口から出しているチーズを左右や上下に伸ばして遊んでいる。

「流希さん、お菓子いくつ届けるんですか?」
「えっと……会社と大学の俺と夏菜が入っていたサークルの人達の分と、文学科の教授の分と、あと夏菜の友達の分があるので、少なくとも十五個は必要かと思います」

 結婚式には夏菜の友達が十人来るハズだったからそれは一人に一つで、野球サークルのメンバーには四十個入りを三つで、俺が勤めていた会社の社長ように一つ。あとは俺が入っていた学部の教授と夏菜が入っていた学部の教授に一つずつ渡せば十分なハズだ。
 大学生の時俺は野球サークルに所属していて、夏菜は吹奏楽部でサックスを吹いていた。夏菜は三年生の時に推薦されて部長になり、部員たちをまとめた。そんな夏菜に憧れて、俺も副部長になったのはいい思い出だ。

「そしたらショッピングモールにでも行きましょうか」
「……ありがとうございます」
 頭を下げていたら、部屋のインターホンが鳴った。玄関に行ってドアスコープを覗き込んだら、大学の同級生で、サークルの部長をしていた新太がいた。俺はすぐにドアを開けた。

「流希!!」
 新太が叫びながら、俺の両肩を叩いてくる。

 外はねした焦げ茶色の髪は枝毛なんて一つもなさそうで、灰色の瞳のまわりには全くくまがなかった。身長は百七十センチメートル以下のままか。大学の時と見た目が何一つ変わってないな。

「どうした新太」
「どうしたじゃねぇよ! 少し痩せたか?」
 俺の両肩を掴んで、新太は叫んだ。

「わからない。体重は測ってないから」
「ああ、そう。まあ俺は体重なんか調べなくてもお前が痩せたかわかるけどな。 お前、ろくに飯食ってないだろ?」

 ギク。
「ああ、最近あまり食べる気にならなくて」

「そっか。まあずっと二人だったのに急に一人になっちゃったらそうなるよな」
「ああ。ごめんな。結婚式急に中止になってびっくりしたよな」


「は? 何謝ってんだよ、このドアホ」

 声ひく。

 怒っているのか? なんで。俺、何か悪いこと言ったか?