死のうと思った日、子供を拾いました。


 ボロボロになったラッピング用紙とメッセージカードをゴミ箱に捨てて、机の上にあるパソコンのスイッチを入れた。
 机の真下に、猫型のクッキーが入ったボロボロの箱が置いてあった。片付けしないと。いや、後でいいか。今は無視だ、無視。
 インターネットで銀行にログインした。結婚式のキャンセル料いくらだったっけ。うわ、百万以上か。夏菜や夏菜との子供と暮らすために貯めた金が一気に減るな。……もう減っていいのか。夏菜がいないんだから。

「はあ」
 振り込みが済んだらパソコンを閉じて、風呂場に足を進めた。

 湯船を洗っていたら、風呂場にある夏菜のあかすりと泡立てネットが目に止まった。

「これも捨てないとだよな」
 夏菜の歯ブラシもそのまんまだし。
 シャワーで泡を流してからお風呂の栓をして自動のボタンを押した。
 あかすりと泡立てネットの水を切って、それをゴミ箱に捨てようとする。

 手が震えて、瞳からぽたぽたと涙が溢れた。
 捨てられない。捨てられるわけがない。

 だってこれを捨てたら、夏菜がもう戻ってこないのを認めることになってしまう。そんなの絶対に嫌だ。
 でも捨てないでいたら、これを見るたびに夏菜のことを思い出して辛くなってしまう。それなら一体どうすれば良いのか。捨てても残してもこんなに心が痛むなら、一体どうするのが正解だって言うんだ。 
 神様がいるなら、答えを教えて。俺は一体何をどうするべきなのか教えてくれ。

 心の片隅にいる冷静な自分が囁く。

『とりあえずお前は食事をして、ウェディングドレスとタキシードの返品をしろ』と。そんなこと、言われなくてもわかってんだよ!! そんなことができるほど精神が安定してないから、悩んでるんだろうが。

『お風呂が沸きました』

 うるせえよ。
 今はそんなのどうでもいいんだよ。

 何機械に怒ってんだよ。怒ったら、機会が夏菜を帰してくれるわけでもないのに。

 はあ。なんか拷問を受けているみたいだな。俺、そんなの受けるほど悪いことしたっけ?
 

 ……したか。