死のうと思った日、子供を拾いました。


 そうか。……きっと夏菜は、最初から子供も、猫も助けるつもりだったんだ。
 馬鹿野郎。なんで猫も子供も助けようとしたんだよ。猫も子供も好きだからってそんなことしてんじゃねえよ。どちらかを見捨てれば絶対に助かっただろうが。

「……はぁ。こんなことを考えてたら、夏菜に叱られるな」

 優しい俺が好きだと、夏菜は言ってくれた。

 でも実際の俺は、夏菜の代わりに子供か猫が死ねばなんて考えるくらい酷い人間で、全然優しくなんかない。子供はまだしも、猫は夏菜が育てたも当然だと言うのに。

「……なぁ、返してくれよ、夏菜を」

 小分けにされた猫型のクッキーを一つ取って、弱々しい声で嘆く。

 握りしめたら、クッキーは音をたてて割れた。

 不毛だ。こんなことをしても、何も意味なんかない。ただただ、どうしようもない悲しみが募るだけだ。

 それでも、どんなに不毛だと思っていても、どんなに嘆いても意味ないとわかっていても、嘆かずにはいられなかった。

「はぁ……」

 死にたい。夏菜に会いに行きたい。夏菜のいない世界で生きるなんて、絶対に嫌だ。

 でも、今死んで夏菜に会いに行ったら本当に口を聞いて貰えない気がする。

 それに、死んだところで夏菜に会える保証なんてどこにもないし。

 でも死んだら夏菜に会える保証がないからって葬式まで生きたところで、意味なんかないよな。それに夏菜が焼かれたり、骨になったりするのを見ていられる自信がない。

 でも葬式に行かなかったら、夏菜に叱られるんじゃないか?

 ハッ。夏菜はもういないのに、叱られるってなんだよ。

 夏菜に叱られる環境がないから、こんなに悩んでるんだろ?
 
 はあ。俺の心、すごいめちゃくちゃだな。