死のうと思った日、子供を拾いました。


「はぁ」

 本当は大丈夫じゃない。大丈夫なわけがない。

 ……散歩でもするか。そうすれば、少しは気分が晴れるかもしれない。

 部屋を出ると、ドアの真下に箱が置いてあった。

 『先程渡しそびれたものです。どうか、体に気をつけてください』

 箱の上に置いてあるメッセージカードに、そんな言葉が書かれていた。

 隣の部屋の夫婦からか?

 なんでこんなのくれるんだ。俺は最悪なことをしたのに。


 俺は箱とメッセージカードを拾い上げて、家に持っていった。

 
 プルルル!


 ポケットにあったスマフォが不意に通知音を立てる。

 箱を靴箱の上に置いて、スマフォをポケットから取り出す。

 あ、マズい。夏菜の父親からだ。たぶん、葬式のこととかの電話だろう。……俺、会話出来るのかな。

 でも会話が出来そうにないからって、出ない訳にはいかないよな。

 俺は恐る恐る通話に応じた。

「はい」

「もしもし。流希くんかい?」

「はい。あの、お義父さん、この度は本当にすみませんでした。俺、……仕事、いってて、夏菜をと、止められなくて」

「流希くん、そんなこと言うもんじゃない。夏菜の代わりに助かった子供が可哀想だ。まぁ私も、その子が憎くないといったら、嘘にはなるけれど」

「はい、すみません。あの、お義父さん、葬式は……」

 俺は夏菜が死んだ日、安置所にいた葬儀会社の人に夏菜の葬式や死亡届について聞かれたが、何も答えられなかった。というより、答えようとしたら吐き気が押し寄せてきて、葬儀会社の人の胸にものを吐いてしまいそうになった。……既のところでトイレに行けたから、そうならずには済んだけれど。

 トイレから安置所に戻ったら、そこにはお義父さんとお義母さんがいて、二人はやつれている俺に確認をとりながら、葬儀の話を進めてくれた。

 そのお陰で、葬式のことも、お墓のこともなんもか決めることができた。

 夏菜は今、お義父さんたちの家の棺桶の中で、静かに眠りについている。

 俺と夏菜の家に置くことも考えたが、そうしたら、近所にいるあの子供に遺体を見せてしまう可能性があったので、やむなく断念した。

 まだ小学一年生の幼い子供だ。遺体なんか見たら、泣き出すに決まっている。そうなったら、人殺しのお前に泣く資格があるのかって、そう聞いてしまう気がした。