「飲み物取ってくるわ」
空になったグラスを持って外に出ると、聞き覚えのある声がして耳を疑う。
「いや、あの、私そういうつもりじゃ…」
「なんで?カラオケは個室だから見えないよ。ほらおいで」
「そういうことじゃなくて、」
「ノコノコ個室まで男についてきたんだから覚悟しろよ」
「っ、」
少し先のカラオケルーム。
少し開いたドアから逃げようとする女の子と、その腕を掴む怒った男。
白いワンピース。泣きそうな声。強引に掴めば振り払われることなんて絶対にないであろう細い腕。
「──っ、紗奈!」
気付いたら駆け出していて、紗奈の腕を引いて、彼女を自分の背中に隠す。
「なんだよ、お前」
「うるせえ、消えろ」
紗奈の腕を掴んだまま、外に出る。



